インテリアの映画再び、あげます。

こんばんは。
連日の雨と授業であんまり外に行けなかったのですが、今日は晴れ。
御堂筋でも散歩しようかと思ったけどまた授業だったキムラです。


先日の公開プレゼン会、とても興味深くて面白くて勉強になりました。
モデルを見ながら伺いたいことがいろいろ有ったのですが
学内展示は無いんでしょうかね?


そんなところから、今日はちょっとインテリア的視点の映画を二本。


まず『The Model Couple(Le couple témoin) 』1976フランス映画。
監督のWilliam Kleinは写真家でもあり、そういった事からも画面構成がアーティスティックなのも感じる映画。
ずばり、この映画の何が好きかっていうと
「モダン家具」。
内容は社会風刺で、たいしたアクションも無く、全裸のカップルに色気もなく、お洒落だけど
凄い映画!ってことでもないので、インテリアとファッションを冷静に鑑賞できます。
76年当時に考えられた「2000年」の設定が
壁も床も天井も真っ白な空間に、実験の計測用に描かれた黒のアルファベットや数字のみ。
ネオン管のサインもちょっとあります。
そして60年代を代表するイタリアの伝説的家電メーカーBrionvegaのテレビ、
当時、世界を席巻したイタリアはKartell社のRound Elementは黒と緑が交互に積み上げられ
黒のテーブルには緑のBartoli chairというプラスティック家具づくし。
照明器具も、曲線たっぷりでお洒落。
設定だって今からだと11年も前なのですけど、今とたいして変わらない…。
Midcentury modernは偉大なり。

(でもま、個人的にプラスティックの椅子はダイニングには嫌ですけど。)


それはキッチンで使われる「最新家電」も同じです。
vividなオレンジの壁にクロームイエローかサンフラワーみたいな黄色の棚が印象的。
当時は、こんなん必要以上に技術力先行してますよって感じで皮肉に登場する
冷蔵庫&冷凍庫、電気コンロ(今で言うIH)などなどなど、どれも今では普通に使っています。


しかもWestern ElectricのDoughnut Phoneらしきものも出てきて
たまらないったらありゃしない。



そんな中で主人公の夫婦が着ている真っ白のツナギはジッパーがたくさんついていて
インスタレーションでも始めるのか!って雰囲気です。
ファッションも当時っぽいけど、現代的で、未来的な…っていうことは
現代が進歩してないのか?衣装はagnès b.です。


途中に出てくる大臣が
未来にふさわしい都市づくりは都市と人間の共生だ
そのための公共事業は採算度外視で考えなければ
とか言っているんですけど
一方の実験する側は
コルビュジェ曰く「人間は人間によってのみ知る」
だとか
窓は台所でも浴室でも一方向のみで良い
皿は同じ物だけを使っている
流しは40cmあれば十分
あと20cmは天井を下げられる
とか言うのです。


単純に、こういう会話を聞きながら
数値の正誤は別にしてどっちの意見も空間には必要だなぁ、と思う訳です。
冷静な目と大局を見る目。社会的な考え方。
映画を映画として見ても良いし、
デザインを考えてみても良い。
例えば、丸形の収納が果たしていいかと言われたら、そうでもないと思う。
中に回転皿があったなら便利かも?
真っ白い空間はモダンだけど、映画の絵面は良いけど
人が生活していて似合っているか?とか。


ただ、わたしがこの時代の家電が好きなのは
デザインの自由度が高いから。
面白いってだけではなくて、そこは商業的な固さも持っていたりするし
±0の加湿器が流行るこのご時世、このデザインは今でも生きている。
でも、現代ならではの技術力が加わるともっと凄い。
例えば三菱の蒸気レス炊飯器とか。
そんなの作れたらカッコいい。


そんなこと考える洋画に対して
二本目の映画にはモダン和風を選んでみました。


大御所持って参りました小津安二郎監督作『秋日和』です
これは上記の映画より少し前、1960年製作なので
日本は高度経済成長期まっただ中。完成直後の東京タワーも出てきます。
アトムと力道山東京オリンピックベトナム戦争文革The Beatles
そんな時代です。
帰宅した旦那が服を脱いだその場に当然にほっぽらかして、
当たり前に拾ってハンガーにかける奥さんが当然の時代。


最近あまり小津映画を見る人は少なくなっているというか
大御所すぎて食わず嫌いになりそうなんですが、この映画はめっちゃ取っ付きやすいです。
有名な作品を外してこの『秋日和』を選んだのは
物語が『晩春』の焼き直しみたいな感じな上に、
昭和の俳優がくそ真面目に演技しながらの台詞はコミカルで
小津調って今考えるとちょっとシュールかもしれない。
だからこそ、小津監督の建築的セットとお洒落小道具がじっくり鑑賞できるのです。



全体的にやたらと縞模様が出てきて、ストライプ製品を捜すだけで楽しい。
ベランダに掛けてあるタオル、靴下、着物、嫁ぎ先から出戻った娘の鞄…
ユーハイムの包装もストライプ。


小津の映画はローアングルで有名ですが、その角度だからこそ
小道具のフォルムがはっきり見えて、分かりやすい。
撮影は水平が保たれているから、画面に垂直に入ってくる内装は
印象が強く、家屋がとても理解しやすい。
映画の中で三バカというか悪友のおっちゃん3人組の家は
それぞれがとても良く似たスケールで出来ていて
内装、小道具で差異が付けられています。
そうしてちゃんと生活感が分けられているんですね。


よくある純和風ではなく、襖の模様は小花や有機的植物模様であったり
娘のアパートには黄色のやかんに、真っ赤な鍋(!)、
母の勤務する服飾学校なんて、柱も扉も時計も電話までも
ちょっとミントチョコのような青緑。白い壁に青緑、家具は木製で
ソファや登場人物の衣装はちょっと渋い緑系。
小物が朱色だったりして、とってもお洒落です。
まさにレトロモダン。
料亭の小鉢や皿も、徹底してそんな感じ。

定食屋で食器が白無地ってあり得ないけど、普通に使われちゃっています。


しかし、構造はリアルです。日本家屋のアイテムも完璧です。
現実性と装飾性がちょうど良い映画に私は感じているのですが
残念ながら、屋内セットで撮影を好んだ小津映画には
家の内部から外が見えることはほとんどなく、外部との融合などは
あんまり感じられない。
当たり前ですけど、お芝居用の間合いで寸法は決められているので
実際の家の寸法ではない間であることも念頭に置くべきです。

そうふまえたとして
これらの映画の醍醐味は、実際動く人間が生活している空間をイメージするのに
いいんじゃないかな、と思うのです。
具体的にイメージする手助けになるんじゃないかと思うんです。
で、なによりインテリアがね、良いんですよ!(笑


最後に、
東大の建築でて大林組に就職した人…とは別の人と結婚した
ヒロインの結婚披露宴の花輪が可愛すぎて衝撃です。